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部活の終わりの時間になり1年の部員達はばらばらと片づけを始める。その合間をぬって要と佳之、他の2年の部員達はぞろぞろと道場を後にしていく。
戻る途中で部員の一人が「本屋に行くやついたら一緒行こうぜ。」と言い出した。
結局その場にいた佳之を除く全員が本屋に行く事になった。佳之は塾があり部活が終わったらそのまま直行しなければならなかった。
部室で制服に着替えている時、要の様子を伺っていた。部活が始まる前のイラつきはもう感じられなかった。部室からぞろぞろと駅の方へ向かっていた。手元の時計は6時半を指していた。
「じゃ、俺、こっちだから。」と要や部員達に告げる。「おう!じゃ、また明日な。」と挨拶を交わし横断歩道を渡り桜池大通りに面しているレンガ貼りの4階建てのビルへと佳之は入っていった。その中の2階部分に佳之が通っている塾があった。
高校1年から通っており何人かの親しい友人もいた。いつも窓際の桜池が見える席に座る。
ここからの眺めを佳之は気に入っていた。ちょうど横をむくとそこには桜の木々が飛び込んでくる。
春は桜を眺めるには絶好のロケーションだった。
これが塾じゃなければな。とついつい思ってしまうほどだった。授業の開始のチャイムがなり塾の担任が無駄口を一切叩かず授業を開始した。
佳之は頭は良い方だったがどうしても数学の要領が悪くこれだけはどうにもならず通っていた。おかげで他の科目と同じく位の成績を維持できていた。
授業は7時から1時間半。今日は部活でいらぬ心配などした気疲れもあってかあまり授業に集中できなかった。授業開始から50分程たった頃授業に飽いた佳之は公園入り口に視線をむけた。と、そこには街灯の下で本を読みながら立っている要の姿が目に飛び込んできた。
―涼川だ。何してるんだあんなところで?
佳之はしばらく眺めていたが要は動くことなく街灯の下に佇んでいた。―誰かを待っているのかな?要の事が気になり授業どころではなくなっていた佳之は早くこの退屈な時間が終わる事だけを願っていた。
後15分弱程で授業が終わると思った時、まったく動かなかった要が駅の方へ動き出した。
佳之は要の移動した方へ視線を走らせる。その視線の先には同じ制服をきた男子学生が上を向きながら歩いてた。その男子に要は近づいていく。
男子は立ち止まり話しかけていた。おもむろに要はその男子の腕をつかんでいた。つかまれた男子はそれを振り解こうとしている。
佳之はみてはいけないものを見てしまった気になり視線をそらしテキストに視線を走らせた。
-今のは何だ?あの要が男の腕をつかんでいた気がする。
視線をそらした佳之だったがどうしても気になり再び視線を外に向けた。その時要がその男子を引っ張て歩いていく姿を目撃した。佳之は気が動転してしまった。
全身からなんだかわからない冷や汗のようなものが噴出してきていた。
気がつけば授業が終わり生徒達はぞろぞろと教室をでていく。佳之は急いでテキストなどを鞄にしまう。
友人の幾人かが佳之に声をかけていたが佳之は「ごめん」と言って急いで教室を後にした。
廊下には授業を受け終わった学生達が一気に出たためかき分けて進んでいかなくてはならなかった。
階段を一つ飛ばしで駆け下り大通りにでた。通りをはさんだ公園入り口をめざすがそこにはもう要と男子の姿はもうなかった塾の入り口から少し離れた所に横断歩道がある。
そのまま横断してしまおうかと佳之は車の流れを見ていたが車の途切れる気配がなかった。
あきらめて横断歩道まで急ぎ信号が変わるのを待った。
いつもはそんなに長く感じない信号も今はやけに長く感じた。車の流れが止まり信号が青に変わったとたん佳之は公園入り口目指して走り出した。
息を切らしながら佳之は暗闇に覆われている公園に目を向けた。
月明かりで薄ぼんやりと明るく所々街灯のオレンジが幾重にも重なり照らしていた。
佳之は目を凝らしてみてみたがやはり人影はなかった。佳之の家は桜池大通りを高校の方へ向かって行った所にある。この公園を抜けて帰れないこともないがえらく遠回りになることは間違いなかった。
躊躇いながらも佳之は公園内に足を踏み入れた。
じゃりじゃりと蹴飛ばしながら人気のない公園をあるいてく。ちょうど桜池まで来たところでかすかな人の声が聞こえてきた。場所までは特定できない。
きょろきょろと周りを見渡してみたがわからなかった。あきらめかけたその時大きな声が聞こえてきた。
「大野!こんな所にいんじゃねーよ!」
佳之はこの声を頼りに探す。その声は桜池とは反対の小高い丘のふもと辺りから聞こえてきていた。
その場所には街灯が一つぽつんとあるだけだ。佳之はこんもりと密集している植木の影に隠れて覗いて見た。そこには要の姿はなかった。いたのは多分要に腕を引っ張られていた大野と呼ばれた男子と中野智弘だった。
佳之は中野と1年の時同じクラスだった。さして中が良いわけでも悪いわけでもなくただのクラスメイトという感じだった。
中野は大野と呼んだ男子に「お前こんな所で何してたんだよ。」という中野の問いに大野は「悪い。ちょっとなんか調子悪くてさ。休んでた。」といった。
「そっか、大丈夫か?」
「ん、あぁ。悪かったな。ほら、雑誌。」
と言って書店の袋を渡した。
「おう!サンキュ!こっちこそ悪かったな。具合悪いなら悪いっていえよな。」
と心配しながらも嬉しそうに受け取る。
「まぁ、どうせ帰り道だしさ。」
といいながら二人は歩き出そうとしたその時、中野は視界に入った幸哉のワイシャツに目をやった。
「暑いのか上のボタンしまってねーぞ。んっ?なんか赤くなってんぞ?虫にでも刺されたか?」と指摘した。あせりながら「あ・・・あぁ、ちょっとな。」と幸哉はワイシャツのボタンを摘んだ二人は佳之のいる方向とは反対へ歩いていった。
佳之はそんな会話に気にもとめずに眺めていた。結局要の姿は見当たらなかった。
今にして思えばあれは本当に要だったんだろうか?
佳之は腑に落ちないままその場を立ち去った。
月だけは真実を見ていた。
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男の子達への愛のメッセージもOKですよv(^-^)v
日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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