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中野は部活で使うスパイクを教室に置き忘れ取りに戻って来ていた。
「俺様とした事が。一番大事なスパイクを忘れるとは。」
階段を一段飛ばしで駆け登り最後をトォ!といいながら上りきる。
夕日が廊下まで延び全体が薄い黄金色に染まっていた。静まり返った廊下をパタパタとドリブルの真似をしながらB組を目指した。
鼻歌を歌いながらA組の前を通り過ぎようとした時一人の生徒が西日に照らされ泣いているように見えた。
中野は足を止めた。中を除いてみれば家蔵だった。
ドキン。
中野は西日を身にまとった家蔵が何故か羽衣をまった天女の様に見え、いままさに消えていなくなってしまいそうな程清らかで、はかなげに見えた。
声をかけずにはいられなかった。
「家蔵!」
中野の声は今まで聞いたことがないほど凛としていた。
佳之はハッとなり慌てて目元の涙を拭う。震える声でなんとか答えようとする。
「や…、やぁ。」
中野は窓際近くの佳之目掛けて机にガタガタとぶつかりながら走り寄ってた。そして隣に立ち止まる。佳之は中野のみたことのない必死の形相に圧倒され止めることが出来なかった涙がピタッととまる。
少し息が上がっている中野は眉が吊り上がり少し怒っているように見えた。
「中野、どうしてここに…。」
中野の顔は西日の輝く光を浴び濃い茶色の瞳は佳之が消えていないこと確認する。
その瞬間中野は真横から佳之を抱きしめる。まるで存在を確かめるように。佳之の肩に自分の額を軽く乗せる。
「よかった…。」
安心したようにそう呟く。
抱きつかれた佳之には何がなんだかわからずどぎまぎする。
「な、中野。どうしたんだ?」
身動きの出来ない佳之は顔を少し傾ける。中野からの髪から太陽の匂いがし佳之の中に忍び込んで来た。中野は自分がしている事に気がつき慌てて絡めていた腕を離した。
「ゴ、ゴメン!」
その反動で後ろへ飛びのく。抱きついたことへの恥ずかしさからみるみるうちに真っ赤になっていく。「オ、オレ」たじろぎながら中野は回れ右をし机の足に躓きながら教室をでていった。
佳之は中野が抱きついてきたことで何だかわからず泣いていた涙がどこかへ消えてしまっていた。
「家蔵先輩。」
呼ばれて扉の方を見てみると弓道部の後輩が立っていた。
「部活始まりますけど。」
「すまない。すぐいくから先に始めててくれ。」
佳之は慌てて鞄に詰め込む。
「あの、涼川先輩は?」
佳之の手が一瞬止まる。
「涼川は体育の授業中に捻挫して今多分病院だ。」
涼川が大野と一緒に病院に行った事に動揺した自分がいた。その感情がなんなのか佳之自信にも自覚がなかった。
中野が抱きついてきたことの驚きも大きく混乱していた佳之だった。
「家蔵先輩?」
ぼーっとした佳之に後輩が心配そうに声をかける。
「涼川先輩、そんなにひどいんですか?」
どうやら佳之が話さないのは涼川の容体が悪いからだと思ったらしい。
「いや。軽い捻挫らしいから。」
「そうですか。家蔵先輩が元気がないので余程悪いのかと思いましたよ。じゃ、先に行ってます。」
と言ってパタパタと廊下をかけて行った。
佳之はしまいおえた鞄を持ち教室を後にした。
中野とは仲は良くも悪くもないが抱きつかれるような仲でもない。あの行動の意味が理解できずにいた佳之だった。
抱きついていた中野の太陽の匂いがやけに気になったのは確かだった。←ランキング参加中!お蔭様でランキング上昇中!ありがとうございます!
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日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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