恋愛LEVEL6 恋の囁き心の呟き Love Step10

結構長い時間『KingDog』にいたせいで試合の開始時間が迫ってしまっていた。
「佳之ゴメン！時間配分間違えた！走れるか？」
「うん！平気！急ごう！」
二人は全力疾走とまではいかないが結構な速度で走る。どうしてもキックオフから見たい智弘は少し先を走っていた。
時折振り返えりながら佳之がついてきているか確認していた。ところが何回目かに振り向いた時、佳之の姿が見えなくなってしまった、キョロキョロ探す。
スタジアムに向かう人でごった返していた通りは佳之の姿を完全に見失わせていた。
「佳之！！」
智弘は必死で探した。人の流れとは逆に進みながら佳之の名前を呼び続けた。それでも佳之の返事はなかった。
「俺のバカ！！！いくら最初から見たいからって佳之を置いて行くなんて！！！」
激しく自己嫌悪する。
プルプル。
ポケットの携帯が揺れた。慌てて開いてみると佳之の名前が表示されていた。
「佳之！！ゴメン！！！今どこにいる！！」
『目の前だよ。』
ぐるりと一周すると佳之が額にうっすらと汗をかき呼吸を荒くしていた。
「佳之…。」
ごった返す人の波をかきわけて佳之へ走り寄った。そして抱きしめる。
「ゴメン！本当にゴメン！俺、サッカーの事になると周りが見えなくなっちまう…。」
突然の出来事に佳之は驚いたが、智弘の優しさが嬉しかった。人の波は男の子二人が抱き合っているこの光景を野次馬的に遠巻きに見ながら通り過ぎて行く。
智弘はそんな事お構いなしに佳之を抱きしめていた。佳之も同じよう腕をまわしたがさすがに気恥かしくなった。
「智…、わかったから、そろそろ行かないと見れなくなるよ？それに…みんな見てるし…。」
ガバッと佳之から慌てて離れた。全身が真っ赤になり2、3歩後ずさる。
「ゴ、ゴメン！！！！」
そんな智弘の手をつないで佳之が今度は智弘より先に立った。
「手をつないでいれば離れないよ。だから急ごう！僕も楽しみなんだから！」
ぎゅっと握られた佳之の手の温もりが智弘に静かに流れ込んできた。
「佳之…。」
「行こう！」
にっこりほほ笑んだ佳之に笑顔で返した。
―やっぱり…サイコーーー！！！佳之！！！

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