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家蔵(カグラ)佳之(ヨシユキ)は要の様子がおかしい事をなんとなく訝しんでいた。
先日行われた地区予選でギリギリの通過だったにもかかわらずそれに対しての叱責が普段の時よりも穏やかだった事が佳之の中で納得がいかなかった。
本調子ではない要の出場だったことは確かだが普段の要ならきっと『俺が出なくても上位通過ぐらいできなくてどうする!』ぐらいの叱責があってもおかしくないはずだ。
ところがこの時は自分の捻挫に対しての不甲斐なさからなのか謝罪の言葉が合ったくらいだった。
副部長を努める佳之は高校で弓道を始め要のその腕前とセンスのよさに惚れ込んで以来ずっと後を追い続けていた。2年で部長になった要の片腕になるべく佳之は副部長に立候補した。最近は以前の冷酷な印象が薄れていた気がしていた。
新緑の5月、爽やかな風が吹き抜けていくそんなある日の出来事だった。
いつもの通り佳之は部室に入り弓と矢を準備していた。すでに何人かは用意を済ませ道場へ移動していた。いつもなら要は一番にきて準備が終わっているはずなのにその日にかぎって姿をなかなか現さなかった。佳之は何か用事でも出来たのかと思ったが用事のある時は必ず連絡をくれていた。
気にかけながら部室を出ようとしたとき扉があいた。そこには要が立っていた。二人とも同時に驚いた。外側に扉を開けながら佳之は少し意外そうに言う。
「涼川、珍しいな。」
要は一瞬顔色を変えたがすぐにいつもの冷静な顔に戻る。
「悪い、ちょっと用事があって。すぐに支度する。」
要は部室の中に入りロッカーに鞄を放り込み支度を始めた。佳之はなんとなく腑に落ちない気持ちを持ちながらも部室を後にした。
「先に始めてるぞ。」
要は佳之の方を見ずに短く「ああ」と答えた。要は佳之が部室を後にした事を確認し携帯のメールをチェックしたが幸哉からの返信はまだ届いていなかった。
深いため息を一つついて携帯をまた鞄にしまう。
胴着に身をつつみ部室から出てきた要は少しイラついた感じだった。筋トレを行っていた部員達は要の登場に自然と緊張が走り挨拶をしていく。
一番奥の佳之達に合流する。佳之は部員達を整列させた。その中で整然と並んでいるはずの部員の何人かが談笑しているのに要の目にとまる。
要は切れ長の冷たい視線を送り周りの部員がその視線に気付きそれを教える。要はツカツカと側により冷たく言い放つ。
「辞めるか?」青ざめた部員達は「すみません!!」と深々と頭を下げる。
佳之は小さく溜息をついて、要の変わりに練習を始める合図をした。
部員たちはわらわらと散らばっていく。その中に混じりながら佳之は要の側に寄った。
「どうした?何かあったのか?」
「なんでもない。」
要はふいっと視線をはずし練習を始めた。
射位に入る前に一礼し一連の動作を行い弓構えの時点で要の動きが止まった。
佳之は要の止まった理由がわからなかった。再び動きを始め的に視線を向け矢をはなった。その動作を他の部員達は羨望の眼差しを向けて見ていたが佳之だけは納得がいかなかった。
要は一礼をし戻った。隅の方で正座をし、精神統一を始めていた。
そんな要に佳之は近づき一緒に正座を始めた。要は佳之が隣に来た事はあえて無視をしていた。佳之は目をつむったまま話始めた。
「さっき、なんで止まった?」
目をつむったまま動かない。こうなった要に何を言っても無駄なのはわかっていたが佳之はあきらめなかった。
「涼川、今日なんか変だぞ?」
要は普段とは明らかに違う表情で答えた。
「別に。」
佳之は小さく溜息をついて目を瞑った。部員達があらかたの練習がおわったところで声をかけてきた。
要と佳之は練習メニューを伝え部員の指導にあたり自分達も同じように練習に加わった。
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日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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