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要の捻挫もだいぶ良くなり弓道部の地区予選も何とか突破できた。
弓道部員達も少なからずホッとした表情で部活に勤しんでいた。
相変わらず要は厳しく後輩を指導している。
佳之と言えば要の捻挫以来少し距離を置いて接していた。今までは要の側について後輩指導や練習をしていたがここの所一人で行動する事が多くなっていた。
佳之は中野に抱きしめられてからなんとなく要に罪悪感を感じていた。
別にそんな感情を要が知っているわけではないが佳之の中でのケジメのラインだった。
自分の中で要への気持ちが変化してしまった事への不安がそう思う原因な気がしたからだ。
ちょっとした出来事が人の気持ちにこんなに波紋を広げるとは今の佳之には想像できなかった。
それは5月も終わりに近づき梅雨の声を聞くどんよりと黒い分厚い雲に覆われ今にも大粒の雨が降り出しそうな午後の事、その出来事が忍び寄っていた。
その日の弓道部は基礎体力作りの為グランドの大外をランニングしていた。先頭を切って走る要の後ろを佳之が掛け声と共に後を追って走っていく。張りのある声が校庭の隅を移動していた。
部員達はこの分厚い雲から今にも大粒の雫が落ちて気やしないかと気が気ではなくいつも以上に走るスピードが早かった。要は一人黙々と走りこんでいく。
佳之もその後を負けじと追いすがる。他の部員達も今日は真面目に走っていた。
要のだした3周を走り終え部室へ戻りながら、雨降ってくるよ~、みずぅ~という声が飛び交っていた。
各々が勝手をいいながらダッシュしていく姿を見ていた要は「あれぐらい走れるなら次はもう2周増やしても大丈夫だな。」と少し後ろをついてくる佳之に話しかけた。
佳之は久方ぶりに要の声をじっくり聞いた気がした。少し低めの声は心地よく耳に残り繰り返される。
佳之は要の顔を見ずに答えた。
「確かに。でも正直結構きつかったかな。」と苦笑いを浮かべるだけが精一杯だった。
そんな佳之に視線を向けて要は少し不機嫌気味に問う。
「家蔵。お前最近俺を避けてるだろ?」
佳之の心臓がドクンと音をたたて跳ね上がる。思わず飛び出してしまいそうな心臓を引っ込めながら平静を装った。
「別に、避けてないけど。」
やっとの思いを口にする。少し震える声は要にばれているようで落ち着かなかった。
視線を合わせようとしない佳之に少しいらついて要は立ち止まる。それを佳之は追い越して行く。
今の感情を要に悟られない為の防御の意味を含んでいた。ところがそれが裏目に出てしまった。
すれ違い様に少し前を歩く佳之の腕をつかむ。
それは無理矢理というよりただ単に佳之を呼び止める為につかんでみたという感じだ。
佳之はフラッシュバックする。
―この間の公園で見ていたようにもっと強引につかまれれば…。僕は…。
思わず思い出してしまった記憶は知らず知らずのうちにより消える事のない記憶へと書き換えられてしまう。
他意のないこの行動はさらに佳之の気持ちを硬くしていった。つかまれた腕は痛みはないがその体温がじんじんと伝わってくる。
「涼川、腕、離してくれ。」
「あっ、悪い。」
腕をつかんだ事に何のためらいもない要はすんなりと手放した。手放された腕はぱたっと落ちる。
離された腕には要の体温がまだ残っていた。
「別に、避けてないよ。ただ話す事がないだけだ。」
俯きながら情けない自分を見せたくなくて背中を向けたままゆっくりと歩き始めていた。
要は腑に落ちないまま佳之の後を歩き始めた。←ランキング参加中!温かい愛のポチッを!
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思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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