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幸哉にしてみれば登校までの時間は充分すぎるほどあまっていた。
残された幸哉は鍵を掛けてしまった自宅の扉を眺めた。
―もう一度家に入るのもなんだし、たまにはゆっくり行こうかな。
とりあえず学校に向かうことにした。
今日の天気は昨日の天気とは打って変わりまたもや分厚い雲に覆われていた。
しばらく歩いていた幸哉はいつもの通りとは少し違う道を通っていた。
―そういえば要の家って確か6丁目だったよな。
まだ一度も行ったことがなく住所も大体しか知らない。多分ここらへだろうとうろうろしてみる。
「涼川って名前はあるけどあの漢字ではあまり見たことないよな…」
ぶつぶついいながら幸哉は表札を見ながら歩いていた。その時、聞きなれた声が曲がり角の向こう側から聞こえてきていた。要らしき人影が幸哉の視線の先にいた。
幸哉の顔がほころんだ。
―昨日、心配かけたから内緒で会ったら喜ぶかな。
智弘にメールそした時、普段電話なんかしない要からの大量の着信履歴とメールが来ていた事を知った。随分心配を掛けてしまった。そんな気持ちがこみ上げてくる。
幸哉はいそいそと壁に隠れて要が来るのを待っていた。要が来るまであと少しだ、とどきどきしながら待っていた。
ところが幸哉の予想に反した事態が起きた。要は一人ではなかった。
あろう事か女性の声がする。
「ヨウちゃん!早くしないと遅刻しちゃう。」
「それは望(ノゾミ)だけだろ?俺はまだ時間あるし。」
「そんなこといわないで一緒に行こうよ!」
望といわれた女性は少し舌足らずな感じだかパキパキと話していた。
幸哉は屏の影からそっと覗いて見る。
要の腕を取りながら歩く女性は、肩より長めの薄い茶色の髪を縦ロールに巻き、身長は幸哉より少し低いくらいだ。
唇にはパールのグロスが塗られておりキラキラと艶めいていた。淡いピンクの膝丈ほどのマーメイドスカートに水色のサマーセーター、靴はコバルトブルーのミュールをはき、カツカツと音を立てていた。
要に絡みついた腕の指先は手入れされネイルが綺麗に施されていた。
どこから見ても立派な大人の女性だった。
「ヨウちゃん、歩くの早いよ。まってよね。」
腕を引き寄せながら甘えた声で「ヨウちゃん」と呼ぶ。
呼ばれた要は照れつつもやけに嬉しそうだった。そんな顔、幸哉は見たことが無かった。
幸哉の心臓はドクンドクンと大きな音を立て今まさに破裂する寸前だ。頭の中が真っ白になり、ずるずるとその場に座り込む。
「望、今日、帰りは?」
望は要の腕から離れ、ぴょこっと前に立った。
「今日は少し遅くなるかも。」
要はにっこり笑った。
「じゃ、電話してな。迎えに行くから。」
「えっ、いいよ。そんな来なくても。」
「望一人じゃ危ないだろ?いいから電話しろよ。」
てへっ、と舌をだして右手を額に当て敬礼のようなしぐさをしてみせる。
「了解しました!じゃ、行ってきます!」
「いってらっしゃい。」
要はうれしそうに手なんか振って見送っていた。望が去った後はいつものポーカーフェイスの要に戻っていた。
そのまま要は学校へと足を向けたが顔の向きだけは名残惜しそうに望の後姿を追っていた。
幸哉は放心状態のまま動けず座り込んでいた。
いつの間にか降り始めた霧雨は薄いベールのように舞い始め幸哉の気持ちに薄い影を落としていた。
日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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