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桜池公園前駅まで戻ってきた時にはもう6時を過ぎ夕闇が迫っていた。
会社帰りのサラリーマンや学生がその小さな駅にごった返していた。二人はその隙間を縫いながら幸哉の家に向かっていた。
智弘は足取りも軽くなっていた。自分の気持ちを持っていく方向が決まったからだ。
どんなに悩んだところで結局はシュートを打たなければ試合には勝てない。
嫌というほど体に染み付いた感覚だったのにそんな事すら忘れていた。
今日、幸哉と過ごしたことで自分がやらなければならない事がはっきりした。
幸哉に感謝の気持ちを何度も繰り返していた。
「中野。」
ちょうど公園入り口に差し掛かろうとしていた時、幸哉は何かを決心したように立ち止まった。
「ん?何だ?」
ポケットに手を突っ込み何も考えずに返事をした。幸哉を通り越していく。それにつられて幸哉もまた歩き出した。
「俺、付き合ってるやつがいるんだ。」
智弘の足が止まった。何かを言いかけたが後ろを振り向かない。再びゆっくりと歩き出した。幸哉もその後をついていく。
公園の砂利は今日の太陽のおかげで乾燥し軽快な音を立てていた。
桜池の周りのベンチの一つに智弘は越しかけた。街灯がちらほらとつき始めた公園の明かりは穏やかに光を放っていた。
幸哉は智弘に隣に越しかけた。幸哉が口を開きかけたとき智弘が口を開いた。
「涼川だろ?彼氏って。」
穏やかにそれでいて確信めいた口調で聞いてきた。少しの驚きを幸哉は感じた。それはもしかしたら?と思っていた部分があったからかもしれない。
「知ってたんだ…。」
智弘は「まあな…。」と呟く。
幸哉は苦笑いのまま何も言えず俯いて黙っていた。小さなため息をついて智弘は話した。
「俺の好きな奴は、A組の家蔵って奴なんだけど。知ってるか?」
俯いたまま幸哉は驚きのあまり目を見開いた。てっきり中野のが好きなは女子だとばかり思っていたからだ。ところが智弘は家蔵を好きだといった。
あの要の事が好きな家蔵佳之を。驚きとショックが入り混じり幸哉はそのまま凍りついた。
何も言わない態度をみた智弘は幸哉は肯定したと判断した。
「じゃ、家蔵が涼川を好きだって知ってるな?」
その言葉だけは聴きたくなかった。知らないうちにうっすらと涙が滲んでくるのは智弘の切ない感情と幸哉自身の心臓をきりきりと締め上げられるような痛みを感じたせいだった。
幸哉は答える変わりに頷いた。
「そっか…。」
智弘は両膝に肘をついて顎をその上に乗せ桜池に写った月に視線を向けていた。
冷たく光る月は幸哉の気持ちを硬直させていった。
「ご…めん。」
堪らず幸哉は謝りの言葉を口にした。
「なんで、お前が謝るんだよ。」
智弘はそのままでぶっきらぼうにいい放った。
「少し前の俺ならきっとお前とこんな風に話せなかったかもしれないけど、今はなんとなくお前の気持ちもわかるから…。」
そういって幸哉へ視線を向ける。顔を上げた幸哉の頬には涙が流れた。
智弘は困った顔をしながら幸哉の涙をぬぐった。その時ベンチに近づく影があった。
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日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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