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イチと別れた幸哉は燦然と輝く月を見ていた。
月を見ているとなんとなく切ない気持ちになり無性に要に会いたくなった。とはいえすでに10時を過ぎていた。
―メール寄こせよ。って言われたし…。メールならいいよな。…返信が着たら電話…してみよう。
少し言い訳染みたことを思いながら携帯を取り出した。
取り出してみた携帯には着歴とメール受信を知らせるランプがピカピカと光っていた。
開いてみると画面上友達フォルダが赤くなっていた新着メールと、新着着歴がそれぞれ1件ずつ表示されていた。それはともに要からだった。
幸哉の全身の産毛が逆立った気がした。
着歴は8時半頃。メールはその後すぐの時間になっていた。ちょうどイチとファミレスに入ったくらいの時間だ。
要は連絡をくれていた。きっと心配していたに違いない。
メールを開いてみるとそこには1行だけ書かれていた。
『ありがとう。側にいてくれて。』
内容を見た幸哉は胸が締め付けられような痛みがした。
なんであの時メールをしなかったんだと悔やんだ。このざわざわした気持ちを素直に認めないと後悔してしまう自分がいた。
『自分の気持ちが一番大切だって事、わすれるな。』
イチの言葉を思い出した。
要に会いたい、今すぐ。
淡く照らし続ける月を見上げる。月夜は要を思い出す。甘く妖艶で抗う事が出来ない黒い羽の天使を。沸くように溢れくる気持ちは止めることが出来きず、会いたい衝動へと駆り立てる。
要の携帯にかける。
呼び出し音だけが鳴り響く。
『留守番電話サービスに・・・』通話を切り再びかけなおす。呼び出し音だけが幸哉の耳に届き無常にも『留守番電話サービスに・・・』につながる。そしてまたかけなおす。
幸哉は電話をかけながら、その場を駆け出し桜池公園を目指した。携帯を鳴らす度に焦燥感に襲われる。ファミレスから桜池公園まで歩くと15分ほどかかる場所を幸哉は一気に走りぬけ、公園の入り口までたどりついた。
要のメールは言葉がすくない分その一言がとても深い意味のあるものに感じてしまうのだ。
公園入り口で少し息を整えて汗と涙で引きつった顔を手のひらで拭う。静まり返った公園は月明かりだけでも十分な程だった。
少しずつ歩き出し桜池まで進んでいた。拭ったはずの幸哉の瞳からはとめどなく涙が溢れ遊歩道の砂利の上に一つ、また一つ、涙の後が残されていた。
要の声が聞きたいのに聞けない。会いたいのに会えない。
そんな不安はたちまち涙となり溢れてくる。握り締めた携帯を再び開きかけようとした時、着信を知らせる音が鳴り響く。
開ければそこには『涼川』と表示されていた。濡れた瞳でなんども確認する。震える手で通話をおすとその向こうから要の声が聞こえてきた。
「幸哉、お前鳴らしすぎ。」
その時は何も思わず声だけを聞いていた。前方から砂利の音が聞こえ視線を向けるとそこには少し傾いて立っている要がいた。
そして困ったようにはにかむ。
「また泣いてる。」
携帯を耳から離しポケットにしまう。
月の明かりによく映える要は黒い天使が微笑むがごとく幸哉を迎えるように立っていた。
砂利を蹴散らしながら要に飛びつくようにその胸に飛び込む。辺りには幸哉の嗚咽だけが響いていた。要は幸哉の背中に腕をまわしてポンポンと叩く。
「要・・・・・要・・・。」
幸哉の嗚咽交じりの言葉の端はしから聞こえる言葉に答えるように要は力強く幸哉を抱きしめた。

日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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