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病院の待合室をでて、タクシーをロータリーで待っていた。
幸哉は送っていくといったが要はこれを断った。理由は幸哉が今日バイトだからだ。
「今日、バイトだろ?」と要はいった。
幸哉は歯切れ悪くこたえる。
「そうなんだけど、元はといえば俺が無理矢理阻止しなきゃ要は捻挫しなくても良かったわけだしさ。」
要はふっと笑い幸哉の顔を下から眺めるように見た。
「そんなに俺といたい?」
幸哉は慌てて目をそらす。
「それとこれとは話が別だろ!」
知らず知らずと声が大きくなる。
「じゃ、タクシーがくるまでここにいろよ。」
1週間前の高飛車な要に戻っていた。幸哉はなんとなくほっとした気分になる。
「ニヤニヤすんな。」
幸哉の肩に手を回している要は横顔を見ながらからかう。
少しムッとした幸哉は唇を尖らせる。
「ニヤニヤなんかしてない。」
タクシーの発着場まできて椅子に腰掛ける。おもむろに幸哉は携帯を取り出した。
「悪い、ちょっと電話かけてくる。」
要を一人椅子に残し幸哉は少し離れた場所で電話をかけた。
「あ、もしもし?イチ先輩?すみません。俺ちょっと今病院なんです。あっ、はい。別になんともないんですけど友達が捻挫しちゃってタクシー乗せるまでついててやりたんで少し遅れます。はい。すみません。」
バイト先への連絡をすませ、要の場所まで戻ってきた。
「悪い。」
要の隣に幸哉は座り込む。
夕日はだいぶ傾きそろそろ夜の帳がおりてきている。5月とはいえまだ夜は肌寒い。
「タクシー、遅いな。」
要も小さくため息をついて同調する。
少し俯いている幸哉は何かを切り出そうとしていて迷っている様子だった。
要は気付かないフリをしてタクシーの進入口を見つめていた。
「要、あのさ、」
おずおずと話し始めた幸哉の方をゆっくりと振り向いた。
「何?」
「あの、あのさ、いつもは昼とかばらばらに食ってるんだけど、なんていうかもしよかったらこれから一緒に食わないか?昼飯。」
要は思わず拍子抜けしてしまった。さっきの続きがきけるのかと思いきやなんとも幼稚な話だった。
―今時、そんな事言うのに必死になってる高校生って見たことないぜ。
視線を幸哉へ向ける。
頬を上気させ照れて下を向いている。要はそんな幸哉を見ているとたまらなくなってくる。
「いいけど、それって俺にメリットある?」
ん?と聞かれて幸哉は固まってしまった。
―昼飯を一緒に食べるメリットってなんだ?
数少ない脳みその皺を総動員させて考える。そして思いつきを口にする。
「俺とのランチデート!」
どうだ!といわんばかりの幸哉の態度についに要は噴出してしまった。
笑い出した要はお腹に手をあてて笑い転げる。
「アホか!すげっ!腹イタイ!!」
涙を流してまで笑う要にむくれる幸哉だ。
幸哉の肩に片手をのせポンポンと叩く。
「悪い。はぁ~。まさか幸哉の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったから、ついな。」
「どうせ、単純ですから。俺は。」
腕組をして不満そうな顔している横顔が要の気持ちを煽る。
少し体を傾け近づける。
夜の帳がそろそろと地上におりて、街灯がぽつぽつと着き始めた。
要は幸哉の脇の髪の毛を少し後ろに流し、左耳についている銀の小さな輪のピアスにそっとふれて囁く。
「カップルみたいだ。興奮する。」
瞬間、幸哉は横を向く。すぐそこには要の形の良い薄い唇があった。
少し前に顔を出せば唇が触れてしまう。
ドキドキしながら幸哉は少し顔を前に倒す。二人は見つめたまま短いキスをした。
軽く触れた幸哉の唇は物足りなさそうに艶めいた
ちょうどその時ロータリーの入り口にタクシーの姿が見えた。
余韻に浸るまもなく要は立ち上がり前に進んだ。
「じゃ、またな。幸哉。」
要はびっこを引きながらタクシーに乗り込んだ。
ロータリーから出て行くタクシーを眺めていた幸哉はさっき軽く触れた唇を指でなぞりながら思い出していた。
告白から1週間しかたっていないのにキスをした。しかも幸哉にとっては初キスだった。
体全体がほてり、頭がぽーっとなりしばらくの間その場で呆けていた。
幸哉のテンションは上がりきっていた。
徐々に気温が下がって風も出てきていたが幸哉はそのまま余韻に浸っていた。
要はタクシーの中で思い返していた。
触れる程度とはいえ幸哉との初めてのキスを交わした。その余韻は不思議なほど残っていた。
重なり合うディープなキスも経験済みの要だったが、今までで一番ドキドキしたキスだった。
キス未遂の事件から1週間だった。要にしてみれば遅い部類だ。
幸哉といると望を思い出さずにはいられなくなる時がある。
あの満面の満点笑顔だ。あれを出されるとどうしても望と重なってしまう。
幸哉は根が単純なだけに楽しそうな時は本当に楽しそうに笑う。むかついている時は本当にむかついている。って顔する。照れる時もすぐ顔わかる。
―だから惹かれるのか?その問いはパンドラの箱だった。開けてはならない。その気持ちは比べてはならない。
要は触れてはいけない箱に厳重に鍵をかけ封印した。←ランキング参加中!温かい愛のポチッを有難うございます!
日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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