恋愛LEVEL1 恋は叶える為にある 18

幸哉は怒涛のような仕事をこなしていた。
ありとあらゆる雑用からレジうちまで、何故こうなったのか。遡れば３０分ほど前の事だった。
要と分かれた幸哉は病院のタクシー乗り場で余韻に浸っていた。
そう浸っていたのだ。初キスに。
気が着けば６時半近くになっていた。あの時タクシーの運転手さんに「乗るのかい？」と言われてなかったらきっと今でもあの場所にいたに違いない。
とにかくその場から猛ダッシュで天屋書店まで駆けつけた。その時は６時半を完全に過ぎていた。
幸哉は髪を振り乱し、額に大粒の汗をにじませて自動ドアをくぐる。
間が悪い事に何故か今日に限って店内は派手に混雑していた。
レジには５，６人が並び雑誌コーナーにも文庫コーナーにも漫画コーナーに人が溢れかえっていた。
レジに入っていたイチの目は血走りとてもじゃないけど話しかける雰囲気ではなかった。
とりあえず、スタッフルームに行きエプロンを装着し店内の商品補充に回った。それが終わったら商品を発注し、予約のリストを作成し、レジを手伝った。
イチはやっと来た後輩を一瞥しイヤミの一つでも言ってやりたい気分がありありと出ていた。
この忙しさに店長も借り出され手伝いのバイトも程なく到着しなんとか店内の混雑が終息したのはもう８時を過ぎていた。
幸哉の悲劇はこの後に待っていた。まず店長に呼び出されやんわりとそれでいて的確に釘をさされ、やっと開放されたと思ったら今度はイチの小言がまっていた。
後続のバイトたちと入れ替わった後にイチが今か今かと廊下で幸哉を待ち伏せていた。
「お前、電話で少し遅れるっていったよな。少しって。それがなんで１時間半なんだよ！」
イチの怒りはもっともで何もかも幸哉自信のたるみのせいでもあった。
「すみません。」
心からの反省をこめて頭を深くさげる。イチは忙しさと怒りで溜まっていた感情を吐き出したおかげでいつものイチに戻っていた。
「よし。じゃ、今日飯食い行こうぜ。もちろんお前のおごりでな。」
幸哉はげんなりしてあからさまに嫌そうな顔をする。そんな幸哉の顔をみてイチはふふ～ん、と鼻を鳴らす。幸哉の目の前に人差し指をだしてチッチッ、と左右に振る。
「今日、お前が遅れた理由を聞くまで、今日は帰さないって決めちゃったんだよね、俺。どうやらタダ遅れたわけじゃなさそうだし。」
幸哉は瞬間、思い出して頬を赤らめた。そんな態度をとったらイチにバレるだけだ。
イチはヒュー。といいながら腰に手を当て仁王立ちする。
「イイ話がきけそうだな。幸哉君。」
イチは鼻歌交じりに幸哉の肩をだいて書店を後にした。

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