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ホームルームが終わった後、教室内は中野が涼川を殴ろうとした事が話題となり、騒然としていた。
女子の何人かは中野のやっかみなんじゃないの?とかいろんな憶測が飛び交っていた。
当の本人は我関せずなまま帰り支度をしていた。
先に支度が終わった幸哉が要の所へとやってきた。
「行こうぜ。」と要に声をかける。相変わらず斜め掛けの鞄を使っていた。
「あー。行こう。」要は我関せずでスタスタと教室を後にした。
回りの生徒達は真相を知りたくてウズウズしていたに違いない。結局何も聞けないまま事は消えていくだろう。
ただ幸哉だけはこの不安な気持ちだけは確かめなくてはいけない気がしていた。
同じ頃佳之はホームルームが終わり教室をでながら携帯を確認していた。
1通のメールが届いていた。
開いてみるとそこには智弘の名前が表示されていた。今まで一度もやり取りをした事がなかった相手だった。抱きしめられた後さえも。
1年の時に教えたアドレスを消さずにいた智弘に驚いた。本文を開き内容に目を落とした時、佳之の動きが止まった。
『今日、桜池公園の大桜の下で待ってる。家蔵がくるまで。もう一度抱きしめたい。』
佳之は全身がほてり真っ赤になっていくのがわかった。
何人かが立ち止まっている佳之を横目で見ながら素通りして行った。
「家蔵?どうしたんだ?」
その声に心臓が止まる。
背中から降り注がれる声は低く、それでいて耳に残る聞き心地のよい声。その主を見てしまったらきっと佳之は感情を高まらせてしまう。今は振り向けない。絶対。と佳之は思った。それでも振り向かずにはいられないそして後悔をする。
ゆっくりと振り向いた視線の先には予想通り、要の傍らに寄り添う様に幸哉も立っていた。
佳之の張り詰めた感情はたちまち溢れる涙に変わっていく。
驚いた要は近づこうと歩き出した。
「くるな!」
思いもかけない言葉に要の動きが止まる。近くにいた何人かが何、何?と興味深々で視線をむける。
その声に反応した要は怒りをこめた視線をむけるとやじ馬達は足早に去って行った。
しんと静まり返った廊下は佳之の静かな鳴咽だけが聞こえた。
要は怒りを表にする。
「家蔵。くるなってどういう事だ。」
佳之の頬を一筋の涙が顎を伝っていく。
瞳にかかるほど黒く艶やかな前髪は佳之の溢れる涙を隠せずにいた。
幸哉は悟った。
-この人、要の事、好きなんだ…。
要は近づき腕をつかみ逃げないように力をいれた瞬間、幸哉は要の腕をつかみその行動を遮った。
「やめなよ…要…。」
幸哉は要の瞳を悲しげに見つめた。佳之は掴まれた腕を振り解き踵を返した。そんな二人を見ていることが苦しくてその場を逃れる為に走り出した。
掴まれた腕が、痛たかった。あの時の腕の熱さと重なり佳之の気持ちに拍車をかけた。
遠くで要の声が聞こえた。佳之はその声を振り切り階段を駆け下りていく。
外は雨がしとしとと降り続き、佳之の流した涙が一緒に溶けだしていった。

日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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