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桜池公園のこの梅雨の時期は紫陽花の独壇場となっている。
こんもりと盛り上がった紫陽花達は雨に濡れ鮮やかに咲き誇る。時折雨音に混じり砂利道を歩く音が響いていた。
傘もささずに虚ろな瞳で歩く佳之の姿は一切の感情が感じられなかった。
大桜は樹齢約60年の枝垂れ桜でこの公園のシンボルだ。その見事な桜を眺めることが出来るように少し高いところに屋根付きの休憩所が設けられていた。
そこから見る春の景色はこの世のものとは思えないほど妖艶で美しい。
大桜の向こうには桜池がまるで鏡の如く静かに佇んでいる。智弘はベンチに座り片膝を抱えその膝の上に顎を乗せていた。
佳之へ送ったメールを智弘は後悔していた。と同時に期待もしていた。もう二度と振リ向いてくれないかもしれないと思う気持ちと、もしかしたら来てくれるかも知れないという気持ちの狭間で思い悩んでいた。どちらにしても拉致があかないこの状況では待つことしか出来なかった。
自分の鳴らない携帯を何度も確認していた。砂利をける音がかすかに聞こえた気がして智弘は桜池へ視線を向けた。視線の先に傘をささずにずりずりと歩く佳之を見つけた。
確認するようにゆっくりと立ち上がり走り出した。砂利を蹴散らし躓きながら佳之の元へと急ぐ。
智弘は腕を出来るだけ延ばし一刻も早く佳之を感じたかった。
砂利の音に気がついた佳之は視線の先の智弘を見つけ動かなくなった。瞳には山の様に膨れ上がった涙が溢れていた。
「なんで…」
搾り出した言葉はそのまま強く降り出した雨にかき消された。智弘は佳之を抱きしめた。
ありったけの気持ちを込める。
佳之の雨に濡れ冷たくなった体を感じながら智弘はやさしくそれでいて力強く抱きしめる。
「なんで…」
小さくつぶやく。雨に濡れた前髪から雫がぽたりぽたりと智弘の肩に落ちる。
「なんで、僕じゃなかったんだろう…」
とぎれとぎれに聞こえる佳之の言葉は智弘の心の奥底に沈んでいく。
佳之は気付いてしまった要への気持ちを涙と雨で流してしまいたかった。
「要の事が好きなんだ…。」
智弘は何も言わず何も聞かずただ抱きしめた。
降りしきる雨の中二人はしばらく佇んでいた。その腕を外し佳之の手を取り自分の手に重ねる。
「あっちに行こう。」
手を引きながらゆっくりと歩いていく。雨はやむ気配などまるでないように降り続く。
屋根付きの休憩所にたどり着いたときには二人はずぶ濡れになっていた。←ランキング参加中!ちょっといいなって思ったらぜひポチッとお願いしますぅ~。
日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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