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佳之の瞳には何も写らない。ただ涙が溢れるばかりだ。
智弘は繋いだ手の冷たさに佳之の悲しみの深さを感じた。
「僕は…多分最初に要を見たときから好きだったのかもしれない。」
小さな声で俯きながら話し始めた。
「今までずっと一緒にやってきたこの関係が壊れてしまうと思ったら怖くて堪らなかった。」
佳之の全身からは雨の雫がポタポタと落ちコンクリートに後を残していく。
「こんな思いをするぐらいならちゃんと言えばよかった!僕は臆病者だ!」
荒げた声は溢れた涙と共に噴き出された。智弘は冷え切った体の佳之を抱きしめ濡れた髪ごしに囁いた。
「佳之は頑張ってる。ちゃんと頑張ってる。」
佳之は軽く頭をふる。
「情けないよ。」
智弘は両手を佳之の肩に置き直して体を離し優しく見つめる。
「佳之は佳之なんだ。」
智弘は親指で佳之の涙を拭う。
「俺は涼川の替わりにはなれないけど気晴らし位にはなれるぜ。」
ゆっくりと佳之に視線を合わせる。
「俺、そばにいちゃだめか?」
「えっ…。」
智弘の言葉にまた涙がでそうになる。要への抑えていた感情を吐き出したその隙間に智弘の優しい言葉がしみこんでくる。
その言葉は心の奥底へと沈んでいった。佳之の答えは一つだからだ。
「中野は僕の側にいない方がいい。」
想像はしていたがやはり思った以上のダメージだった。
「アハハ…。やっぱり俺じゃ役不足だよな。」
「ちがう!そんな意味じゃない!」
「何が違うんだよ!」
さっきまでの優しさがうそのようにイラついた口調で智弘がいう。
「中野が傷つくのを見るのが嫌なんだ!」
佳之はハッとなる。時はすでに遅かった。
「佳之。お前自分が何言ってるかわかってんのか!」
佳之の腕を掴んで乱暴にベンチに座らせる。木材の壁に背中がぶつかる。
智弘は佳之の顔を間に挟むようにバシッと音をたてて両手を壁についた。
「そんなになってもまだ涼川がいいのかよ!!」
智弘は無理矢理佳之の唇を奪った。
見開いたまま佳之は動かなくなる。冷たくなった唇ごしの佳之の感情は冷たい。
激しさを増した雨は智弘の感情のようだ。佳之は両手で智弘を突き飛ばした。
中央のテーブルに派手な音を立てて智弘はぶつかった。唇の端からは真紅の血が一筋流れていた。
「…ツゥ」
親指で流れた血を拭う。
佳之は立ち上がり智弘を一度も見ずに激しい雨の中に飛び出し、降りしきる雨の中を走り去った。
智弘はそのままずりずりと床にしゃがみ込む。
「何やってんだ、バカが…!」
コンクリートの床を拳で打ち付ける。片方の腕で目頭を覆う。
その隙間から頬を伝う涙が一筋流れた。
嵐の様に訪れた恋はむき出しの感情のまま過ぎ去っていった。
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思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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