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智弘は風邪で2日間休んでいた。
久しぶりに登校した日は梅雨の中休みらしく太陽が清々しい程眩しかった。
今の智弘には忌ま忌ましいだけだが。
「ヨォ!中野!風邪はもういいのか?」
幸哉の挨拶に振り向いた智弘の頭上には今の晴れ間に似つかわしくない程どよどよと頭上に暗雲が立ち込めていた。
「よぉ…。大野。」
元気だな…。とげっそりとした智弘の顔はまるで死人のように生気が感じられなかった。
「お前、まだ続いてんのか?どよどよ…。」
苦笑いを浮かべながら智弘は「まぁな…。」と短く答えた。
昇降口であった人ごみにもまれながら二人は教室へむかった。
階段を上る足取りは重くずるずると錘を付けているようだ。
自分たちのクラスの階にたどり着きB組に向かうがその途中どうしてもA組の前を通り過ぎることになる。智弘の気持ちはA組向かっていた。
廊下を幾人かの生徒たちがぱたぱたとあせりながら通り過ぎていった。もうすぐホームルームが始まる時間らしい。
智弘の視線は自然とA組内に注がれる。だがその視線の先に佳之の姿を確認することはできなかった。
「ん?どうした?」
幸哉は立ち止まった智弘に声をかける。
「…なんでもない。」
智弘は躊躇いながら歩き出した。
-いない…。そうだよな…。多分俺もそうするしな…。
「お…おい、中野大丈夫か?」
驚きと心配の声を幸哉があげた。
「何?」
「何って、泣いてるじゃん…お前。」
いわれて目頭に手をあてる。ポロポロと涙がこぼれていた。
「うわ…。まじぃ…。」
自分が思っていた以上に気持ちに余裕がないらしい。ぱたぱたと落ちる涙はいくつか廊下に後を残した。
そんな智弘を一人にしておけるわけもない。
「中野、行こうぜ。」
「どこに」
「いいから!」
二人は教室に入らず担任に見つかる前に上ってきた階段を猛スピードで戻っていく。
生徒達はあらかた教室に入ってしまい誰一人として見かける事はなかった。
昇降口でスニーカーに履き替えた二人は息の続く限り走り続けた。
梅雨の晴れ間は以外にも役立つこととなった。
校門からだいぶ来た場所で先に走っていた幸哉が走るスピードを落とした。その後を追うように智弘も止まった。
桜池公園花噴水前入口まで来ていた。
学校から一番近い入口付近には久方ぶりの太陽を楽しもうとでてきた人達がちらりほらりと入って行った。
二人は入口から少し離れた煉瓦で囲まれた花壇によりかかるように座り込んでしまった。
肩を激しく上下させ出来うる限りの酸素を取り込もうと必死だった。
しばらく回りには二人の呼吸だけが響いていた。
「ッハァ…、な、かの、お前、サッカー部員じゃ、なか、ったけ、?」
幸哉は眩しい青空を片目をギュッと閉じ眺めみた。
「アハ、ハ…、確かにな…。」
智弘は苦笑いと共に空を仰ぎ見た。
「ふぅ…。」
充分な休息とは言えないがこのままここにいても仕方ない。深いため息を幸哉はついて立ち上がった。「この恰好じゃどこにも行けないからな。俺ん家来いよ。」
智弘は「よっしゃ」と言って立ち上がった。二人はゆっくりと歩き出した。
相変わらず降り注ぐ太陽の輝きは智弘の暗雲を少しくらい払拭する威力はあるみたいだった。
要は教室の席から幸哉の姿を見つけ腰を浮かしかけた。
姿を少し見せた幸哉は再び廊下に身を乗り出した。幸哉の肩越しに智弘の姿を見つける。
-何やってるんだ?
訝しんだ要はそのまま席を立ち上がり廊下へ向かった。
教室の扉に手をつき廊下を覗き見るとそこにはもう幸哉の姿はなかった。
肩越しに見えた智弘の姿もだ。要は激しく舌打ちをする。
-ナンナンダ、アイツは!!
扉をドン!と叩く。教室中にその音が響き渡り一斉に要に視線が注がれる。
要の切れ長の瞳には激しい嫉妬の青白い炎が揺らめいた。
教室の中はそんな要の怒りを静かに感じ取ったのかざわついていた空気が静まり返った。
要は静かに自分の席に戻った。
嵐の如く吹き荒れる嫉妬はそのまま止むことはなかった。
日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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