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車内には数人しかおらず怪訝な顔をして二人を眺めていた。
二人掛けの席を向かい合わせにした席がいくつかありその内の1BOXを幸哉は陣取った。
向かい側に智弘がドカッと体を投げ出した。
「もう、当分走りたくねー!」
幸哉のぼやきに智弘が毒づいた。
「たく、部活じゃねーのに走らせんな!」
「悪い、悪い。」
苦笑いを浮かべながら窓に視線を写す。窓枠に肘をついて顎を支える。
智弘は電車のちょうどいい揺れを味わっていた。目をつむって座席に深く座り直す。
両腕はじぶんの体重を支えるように座席につき肩を少し浮かせている。流れ行く景色を眺めながら呟く。
「天気いいなぁ~…。」
幸哉は眩しいのか少し目を細める。
「そうだな…。」
智弘は目をつむったままぽそりと呟く。そのままなにもしゃべらずに揺れに体を委ねていた。
今まで気がつかなかったが日に焼けた健康的な智弘は案外整った顔立ちをしていた。
以前のように短く刈り込んだりしなくなった髪は少し茶色くなっていた。光のあたり方によっては褐色にも見える。前髪は眉毛にかからない程度に無造作にセットされている。
つむった瞼の先は結構長い睫毛が空調の風に揺れていた。
それに、どうやら恋をしているらしいからなのか、今までの少年ぽさが垢抜け妙な色気が加わり、男になってきたようだ。
すやすやと眠りにつく智弘はまるで眠れる森の王子のようだった。
「次は、斑目海岸前~。御降りの方は進行方向右側の出口となります。」
幸哉は智弘の肩を叩いて起こす。
「次、降りるぞ。」
智弘は本当に寝てたらしく開けた瞳が少し充血していた。
「ふぁ~…」
延びをして回りを見渡す。
「どこだ?」
「斑目海岸」
智弘はギョッとなり延びを途中で止めた。
「終点じゃん!!」
この電車は相楽から斑目海岸までを往復する。片道1時間半の路線だ。桜池公園駅はその路線のほぼ中央辺りに位置し、ここまでは約40分程だ。
車内を見渡してみると乗り込んだ時にいた乗客達は途中で降りてしまったらしく今はもう二人しかいなかった。
「終点、斑目海岸前~。」
プシーと空気が抜ける音がして扉があいた。その瞬間、潮の香が入り込んで来た。
ホームに降り立ち回りを見渡してみる。改札を抜けようとしていた乗客が数人いただけだ。
7月の声を聞けばここの駅はサーファーやら海水浴客で混み始める。だれもいなくなったホームを静かに歩く。
改札を抜け人通りのの少ない歩道を歩いて行く。
「人、あんまりいないな。」
幸哉は少し寂しさを感じながら呟く。智弘は眩しそうに手で目の上にひさしを作り目を細める。
「大野、どこいくんだ?」
幸哉はニヤリと笑う。
「何だよ。気持ち悪いな。」
「水族館。」
「はぁー?」何だよ~。と言う声が聞こえてきそうな返事だった。
「お前馬鹿にしてんと後悔するよ。」
幸哉は鼻息を荒くして力説した。
この斑目水族館は公共施設とは思えないほど作り込まれた展示で有名だった。
「俺、時々来るんだよ。」
幸哉はスタスタとチケット売場で智弘の分を買った。
「大野の分は?」
幸哉は財布の中から年間パスポートを取り出して見せびらかす。
「アハハ!お前サイコー!どんだけ好きなんだよ!」
お腹を抱えて笑う。幸哉は智弘に渡したチケットを分捕った。
「せっかくおごってやろうと思ったけどやめだ。600円払え。」
そういって幸哉は手を差し出す。智弘は相当可笑しかったのか今だ目が笑っている。
「悪い、悪い!謝るからチケット下さい!」
はぁ~っと言って今度は幸哉からチケットを剥ぎ取った。
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思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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