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要の足は軽い捻挫で全治1週間と診断された。
幸哉の脳派も異常がなくそのまま帰された。診察が済んだと時にはすでに陽も傾きかけていた。
二人は待合室で会計の順番をまつ。
外来の時間はもう閉まっていても待合室には結構な人が待っていた。幸哉は要を立たせている訳には行かないと思い少し離れた廊下の椅子に連れて行った。
要の浅くため息をついて椅子に座わりお礼を述べた。
「悪いな。」
横顔は少し疲れた印象に見える。
「足が痛いのか?」
「まぁ、多少は。」
少し心配そうに幸哉は要の顔を見ていた。視線に気付き幸哉へ視線を走らせる。
二人は無言のままなんとなくいた。幸哉はこの無言の時間も悪くないと思った。
話をしなくても側に要がいると思うだけで安心した。
この1週間のイライラはきっとこれがなかったからだ。
「俺、俺さこの1週間ずっとイライラしてた。それが何故だか、わかんなかったんだ。」
視線を反対の壁に向けていた。
「今日、要がベッドで寝ているのみてめちゃくちゃ心配だった。腕が折れてたらって思ったらすごい心配だった。」
話をしている幸哉を要は愛しげに見つめていた。
「弓道部の試合が近いはずなのに、骨折や本当は捻挫もヤバイのにさ。」
一呼吸おいて顔を要に向けた。その顔には頬を伝う涙が一筋ついていた。
「自分が要に見ててもらえなかったのが悲しかったみたいだ。俺さ」
その後は言葉にならない。溢れる気持ちはどんどん苦しくなり、どんどん深くなるばかりだった。
ちゃんと自分の気持ちが伝えられるのだろうか。どうやって言えば伝わるんだろうか。ぐるぐると頭の中で意味のない言葉が回っていた。
「幸哉、俺を見て。」
薄暗い廊下の空気は少し冷やりとしていた。窓ガラスから差し込む西陽は隙間からいくつも淡い光の帯となって要を照らしていた。
陰影のついた目元は1週間前の傲慢な冷たい目ではなく愛しげに見つめる瞳だった。
幸哉は涙に濡れた瞳で要を見つめる。あの時感じた甘美な疼きが再び甦ってくる。
「その続きを言って。」
要は片方の手で幸哉の顎を摘む。要の手の温度を感じ幸哉はキュッと目を閉じそうになる。
「だめだよ。閉じちゃ。そのままで。」
と制され閉じかけた瞳を再びゆっくりと開けた。要の瞳が幸哉の瞳に重なる。
閉じられた幸哉の唇がゆっくりと開き言葉となる。
「俺、要のことがす」
「番号札、1435番をお持ちのお客様、会計が済みましたので会計口までお越しください。」
二人の仲を引き裂く無常のアナウンスが響き渡る。
ハッとなる幸哉に対して要は不満そうな顔になる。
「要の番号だ。ちょっといってくるわ。」
幸哉は要の番号札を手に会計口まで出向いていたった。
薄暗い廊下に一人椅子に座り地獄のそこまで届きそうなくらい深いため息をついた要はと恨みがましい声を廊下に響かせた。
「いつも、いつも、いい所で邪魔が入りやがって。なんか恨みでもあるのか!!」
廊下には要の残響だけが残っていた。
日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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