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幸哉は中野から頼まれた雑誌を抱え公園入り口に向かって歩いていた。
駅に電車が着いていないときのこの通りは人通りが殆どない。
逆に駅に電車がつくとそこからおりて来た人たちで随分にぎやかになる。
幸哉は最後に言われたイチの言葉が頭から離れなかった。
“アイツには深入りしない方が”と言っていた。“アイツ”って言うことはある意味特定した言い回しにも聞こえる。
何か知っているのかそれともただ揶揄しただけなのか。
「あの人はまた余計な事を。」と呟く。いつの間にか公園入り口まで来ていた。
間引かれながら植えられている木々は夜風に吹かれさわさわと葉ずれの音を出していた。
見上げると真ん丸の満月が幸哉を見下ろしていた。
街灯の影と月に照らされた影が薄く浮かび上がっていた。
月を見ながら幸哉は一人悦にいっていた。
「満月かぁ~。」
口から出た言葉は思った以上にしみじみしていた。しばらく満月を仰ぎ見る。
そのまま視線を戻すとその視線の先に影を見つけてふと我に帰った。
独り言を聞かれたかも知れなくて少し恥ずかしいと思った。
だかその恥ずかしさは一瞬にしてあせりにかわる。
その影は公園の門柱に寄り掛かり本を見ていた。
本から上げた横顔は月の明かりに照らされた要だった。
少し掘りの深い鼻の辺りは影になりより顔全体がシャープに見える。
足音に気付いた要はその方向に視線をむけた。
本を閉じながら鞄にしまい込む。立ち尽くす幸哉へ要は近づく。
「これから中野とあうんだろ?」
月に照らされている要はまるで黒い羽の天使だ。
艶めいて見える。昼間見るよりも夜の方が迫力が増している。
月の妖艶さのせいだろうか、たったこれだけ聞いただけでも服従しなくてはいけない気がしてくる。
「ていうか、涼川いつからいんだよ。」
幸哉は少し緊張しながら言葉にする。口の中がからからになる気がしていた。
要は目を細めながら幸哉に詰め寄った。
「カ・ナ・メ。って言え。」
幸哉の目の前に人差し指を点き立てる。幸哉はおずおずと言い直す。
「か、要。」
要の顔が満足げに微笑む。黒天使の笑顔だ。
「気になる?」
「べ、別に。」
「ふ~ん。じゃ、教えない。」
幸哉は書店で自分を助けてくれた人物と今ここにいる人物は別人なんじゃないかと思ってしまうほど要は妖艶で意地悪だった。
振り回されっぱなしで幸哉はいい加減この要の態度に頭にきた。
「涼川。お前いい加減にしろよ!」
声を荒げて要をにらむ。ところが間の悪い事に幸哉の携帯が鳴り響く。
着歴をみると“中野”と表示されていた。舌打ちをする。
「あ~・・。悪い、今反対の公園口だ。今からいくよ。・・・・おう、じゃあな」
幸哉は携帯をポケットにしまい要の脇を通り抜けて公園に入ろうとしていた。
ポケットにしまったその腕をつかみながら。冷たい口調で幸哉に問いただすように聞く。
「今の中野?」
幸哉はつかまれた腕を振り解こうとした。
だがつかまれている腕に力がこもる。それでも幸哉は強引に振りほどく。
「誰だっていいだろ。」
要の脇を通り抜けようとした時、また腕をつかまれた。そのまま強引に公園の中に引きずられていく。
公園の中には要と幸哉の足音がじゃりじゃりと響き渡る。
「涼川!腕はなせよ!!」
幸哉はつかまれている腕を必死に離そうともがく。要の力は昼間の件でかなわない事はわかっていたがそれでも抵抗しないわけには行かなかった。
「要、っていえ。」
幸哉の方を振り向く。その時の要の迫力には抗えない。その力強く冷たい瞳は幸哉を飲み込んでしまう。
抵抗するのをあきらめかけた時、桜池の近くに来ていた。
池の周りに設けられた遊歩道の反対側は手入れされた木々などが植えられ少し小高い丘のようになっていた。
その頂上付近には休憩場が設けられている。その一つのベンチに幸哉を引っ張っていく。
無理矢理、幸哉をそのベンチに座らせる。その前に仁王立ちになり座っているベンチの背もたれに幸哉を挟んで両手をつく。その体制のまま要の顔が近づく。
「さっきの質問に答えろ。」
幸哉は要の瞳を凝視できず顔を背けた。
日々妄想中!胸キュンな話を書いていけたらいいなって
思ってます。
末永いお付き合いを・・・。
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