恋愛LEVEL1 恋は叶える為にある ６

人に会って気付かれないように俯きながら昇降口まで下りてきた。
そこには帰りそびれた生徒達が何人かいてしゃっべていた。
幸哉は自分の靴を取り出し履き替える。校庭からは運動部の掛け声が響いていた。
しゃべっている生徒達には目もくれず逃げるようにその場をすり抜けた。
外はそろそろと日が沈もうとしていた。校庭の木々の緑も今は西日につつまれオレンジがかっていた。

サッカー部はトラックの中を陣取りパスの練習をしていた。
中野が元気よくパスを出しているの姿が目に入った。
「中野との約束がなけりゃバイト休むのにな・・・。」
ポツリとつぶやく。ため息交じりの声はさらに幸哉の気持ちを重くしていた。
正門の脇には弓道場が設けられていた。細長く延びた場所は正門から見ることができた。

幸哉は自分のあほさ加減にあきれた。正門を通ればイヤでも弓道部を見る事になる。

いくら唯一の番号を教えられたからといってはいそうですか。と気持ちの切り替えが出来るわけではなかった。
いっそ裏門から出ようかとも思った幸哉だったがバイトの時間が迫っていたのと、かったるさからあきらめてそのまま正門から出ることを決心した。
歩を進めることに弓道部の練習風景が目に飛び込んできた。間が悪い事にちょうど要が弓を構えているところだった。
濃紺の袴に身を包んみ背筋をピンと伸ばし射抜くような鋭い眼光を的へと走らせていている。
要は２年にして弓道部の部長になっていた。
桜池高校始まって以来初めてインターハイに出場しベスト８に導いた功績を認められたからだ。要は入学当初から女子から絶大な人気を得ていた。
制服姿もいいが唯一の袴姿を目当てに何人もの部員を増やしたが２年に上がる頃には最初の女子の半分以下になっていた。
思っていた以上にきついらしい。
それは要の見た目以上に引き締まった体を感じればわかる。
的にむけられた真剣な眼差しは幸哉にキスを迫った時の高飛車な態度はまるで感じられなかった。精神統一をし矢を放つ。要の放った矢はビシッと見事に中心を射ぬいていた。
幸哉はまるで自分の心臓を射ぬかれたような気がした。
心臓に何かが突き刺さる錯覚を覚えるほどに。
気持ちに痛みを抱えながら要に見つからないうちにその場を去ろうとした。
その後ろ姿を真剣な眼差しが向けられている事に気がつかないまま、重い足取りで再びゆっくりと歩き始めた。

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